《旧暦のススメ》
本日8月7日は七夕です。えっ、ひと月遅いんやないかって? いえいえ、今日は旧暦の7月7日なのです。
太古の昔から日本人は大陸伝来の旧暦、すなわち太陰太陽暦を使用してきました。日付が西暦よりも約ひと月遅くなる旧暦は、実はとても科学的! 一年の長さは西暦と同じで地球が太陽のまわりを一周する時間なのですが、一ヶ月の長さは月が満ちて欠けるまでの時間となるのです。
すなわち、一ヶ月は約29.5日(大の月が30日、小の月が29日)となり、いつの月でも朔日(ついたち)が新月で、15日が満月となります。晴れていれば、十五夜には必ず満月が拝めるというわけ。但し、ひと月の長さが29.5日なので、12ヶ月経過しても地球は太陽のまわりを一周できません。公転周期に10日ほど足りないのです。三年経つと30日分ほど短くなります。そこで三年に一度、閏月(うるうづき)を設けて、30日分のズレを直すというわけ。お月さまと太陽、双方のバランスを考えて作られた暦だから「太陰太陽暦」と言うのです。なかなか科学的でしょ!
そして、先人は春分点・秋分点を基準にして公転軌道をほぼ24等分し、二十四節季を編み出しました。立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏……というふうに。で、雨水を跨ぐ月の満ち欠けを1月とし、その新月の日を年始としたのです。毎年、立春あたりに旧正月が来るのは、そういう理由によるものなのです。
旧暦は四季折々の歳時の名前と季節感が見事に符合します。正月は梅の香りで満ち溢れ、雛祭りには桃が咲き、端午の節句には菖蒲が咲き、七夕には満天の星を仰ぎ見ることができます。
ところが、明治政府は「文明開化」や「脱亜入欧」とやらで明治5年12月2日、それまで使用してきた天保暦を取りやめ、翌日を明治6年1月1日とし、その日よりグレゴリウス暦に切り換えたのです。
その結果、日付が約一ヶ月早まり、歳時と季節感が合わなくなってしまいました。正月が過ぎてから寒くなり、三月三日に桃は咲かず、五月五日に菖蒲は咲かず、七夕は梅雨の真っ只中で迎えることに……。明治維新が壊したものは「廃仏毀釈」だけではなかったのです。
そもそも、西暦の年始とは何の日か。それはイエス・キリストの生誕八日後にあたるのです。ユダヤ教の割礼(かつれい)という儀式の日を以て、年始と定めたのだとか。
極めて宗教的な理由で決められた西洋の暦より、天文学と生命の摂理をおもんばかった東洋の暦を使うほうが、よほど生活にそぐうよなぁと思うのは、私だけではありますまい。
私は「旧暦が世界基準になれば良いのにな」と、かなり本気で思っています。私が国連事務総長になった暁には、すぐに実行する所存です。あとは、どうしたら事務総長になれるかが課題(^^;
皆さま! 古典芸能は旧暦抜きには考えられません。いや、芸能だけに留まらず、歴史・文学・書道・茶道・華道など、あらゆる日本の伝統文化において旧暦の感性は不可欠だと思います。もちろん、落語においても!
さぁ、皆さん、豊かな人生を過ごすため、旧暦の感覚を日常に取り入れようではありませんか(^o^)/
🍀米團治🍀